コンビニエンスライフ

生活を便利に 計画を念入りに

[GANTZ:O感想〕不気味の谷を越えた先に杏の良さを垣間見る。


ガンツ:オーを見たので感想をば書くので読んでくだちい。

  

田舎のシネコンにお一人様で、レイトショーにて見たのだが、やはりというべきか、奥浩也先生のファンっぽい見た目の男性の方がたくさんいた(他意はない)。

始まった直後は、不気味の谷が襲ってきて、3Dアニメ独特の違和感というか気味の悪さがムクムクと沸き立ってきていたのだが、開始20分くらいすると人間、気味の悪さにも慣れるもので不気味の谷から急降下し、気づくとテンポのいいストーリー展開と大胆な演出に夢中になっていた。


『GANTZ:O』特報

3Dアニメの映画は、『ファイナルファンタジーアドベントチルドレン』を見て以来の鑑賞と相成ったのだが、アニメよりも現実味がありまくり、しかしながら本物の人間とは少し違うそのキャラクターの造形、表情、しゃべり方に誰でも違和感を持つ。いわゆる不気味の谷というヤツであるが、FFの映画を見た時は「まあ、こんなもんか」程度の感じだったのが、今回のガンツ・オーでは最初に感じるこの違和感がすぐには拭えなかった。はじめに今回の主人公である加藤が駅のホームで電話するシーンがあり、あの場面で私はもう「目の焦点合ってなくてキモチワルイな・・・」と思ってしまい、「純粋に映画を楽しむにあたってこの不気味さはノイズになるのではないか?」と不安に駆られた。しかしながら、慣れなのか何なのかわからないが、ともかく開始20分くらいしたらその心配も杞憂に終わった。それだけ演出がダイナミックで引き込まれるものだったというわけだ。

 

ガンツの大阪編が私は、好きだ。原作は巨人が出てきたくらいでいつの間にか読まなくなっていたが、一番好きなのが大阪編で、大阪チームという別のガンツチームの登場、親しみやすく人情味あふれる大阪の街並み、そして妖怪というなんだかワクワクするような要素ひしひしと詰め込まれているからだ。
映画では百鬼夜行を思わせるような妖怪の群れが襲ってきて知ってる妖怪や知らない怪獣なんかが出てきて、画的には全く暇しない。原作では大阪チームがもっとヤバかった気がするが、映画化にあたってそこは自重したのだろう。なんせ原作ではドラッグ使用、二口女及びぬらりひょんの進化先の女体から形成される巨体の一部との不純な情事というか強姦を行うというなんとも卑劣な横暴極まれりな行動をしまくりだ。

 

四次元HIP-HOP

四次元HIP-HOP

 

   

 ↑呂布カルマの2ndアルバムのジャケットみたいな巨人に進化するぬらりひょんは必見である。

 

あと、声優のレイザーラモンケンコバが最高だった。私はこの3人が声を当てているとは知らずに鑑賞したのだが、全く素人っぽさは感じず、逆にRGの当てた声が素晴らしすぎて、「この声優誰だ?」と思ったほどだ。声のかすれ具合と大阪弁が最高に適材適所。ケンコバもレイカに対してのセリフひとつとっても、あのダンディないい声と相まっていかにもケンコバ然としていながらキャラも引き立てていて相当ハマっている。

 

大阪編が好きな理由は、妖怪や、大阪の街並み、キャラの濃い大阪チームだけではない。一番の理由は、「杏」の存在だ。ガンツのキャラの中で最も好きなのが杏だ。23歳にして子持ち、イノセントでありながら表層では偽善者を忌み嫌う。とにかく純粋で、ガンツの世界で生きて行くには相当酷な環境下に置かれており、その存在がより一層この世界での希望をもたらす。ひたむきに生きようとする杏を好きにならずにはいられない。


ただ、原作を読んでから随分長い年月を重ねたため、加藤が杏と会ってしばらくもしないうちに「あれ?杏ってこんなにうざいやつだったっけ?」という向井秀徳もびっくりの自問自答が私を襲ってきた。


向井秀徳 自問自答 20050612

 

そして終盤には杏のために自己犠牲に陥る加藤の姿が・・・うむ、一つ言えることは、やはり、映画であらゆる展開を決まった時間内に収納しなければいけないことはやぶさかではないのだが、加藤が杏にあそこまで入れ込む気持ちの変化が不十分で、いつの間にそんなに杏のこと好きになったんだよ?と思ってしまう。確かに杏は己を命を投げ打ってまで加藤との幸せな未来を期待した。それにしても尚早だ。なぜ序盤ではあんなに疎ましかった杏を加藤が大事に思ったのか、杏はなぜ加藤に惚れたのかが、よくわからないことになってしまっている。つまり、杏がいかに素晴らしい人間かが、十分に描ききれていない。これはこの映画の数少ない欠点である。あと加藤が一回も杏のことを名前で呼ばなかったことも原作ファンとしては気になる。

 

最後に、西くんの優しさについても書いておこう。これは勝手に私が西くんの人となりの良さを称しているだけだが、西くんは加藤に対して以前加藤がガンツに参加したことがあることを言わなかった。初心者を馬鹿にしただけだ。西くん優しい。