2026年7月13日、ラッパー・3Li¥en(エリイェン)がANARCHYを客演に迎えた新曲「Mooove B*tch (feat. ANARCHY)」をリリースした。Littyへのディスソングである。3Li¥en・ANARCHYともに特定の誰かを名指ししたわけではなく、本人たちからの公式なコメントも出ていない。ただ、MVに登場する女性の容姿(あんまり似てるとは思わないけど)、身振り手振りや、これまでの3Li¥enの言動の文脈を踏まえれば、対象がLittyであることに疑いの余地はない。本稿では、この新曲の背景から、名古屋を拠点とするラッパー・Worldwide Skippaを巻き込んだSNS上の応酬、そしてシーンの反応までを整理していく。
- 登場人物紹介
- くすぶっていた確執
- 「本物」はどちらか
- Worldwide Skippaの裏アカウントとの応酬
- 「セクハラコメント」批判と「チン騎士」呼ばわり
- リスナーからの反応は割れている
- Manakaについて
登場人物紹介
- 3Li¥en(エリイェン):2001年生まれ、埼玉県出身。日本とナイジェリアのミックス。彼女の合言葉は「ハイエナジー」。やたらと「ハイエナジー」と言っている。ラップスタアでもシャウトしていた。言いすぎて、俺は彼女のMCネームが「ハイエナジー」だと思っていた時もあったほどだ。彼女の使う「ハイエナジー」とは、人生のどん底やネガティブな感情もすべてひっくるめて、最終的に最高なストーリーへと変えていく生き様そのものである。
- Litty(リッティ):東京都出身、日米にルーツを持つフィメールラッパー。2024年のデビュー曲「Pull Up」がバイラルヒットし、EMPIREと契約するなど新世代の代表格として台頭。
- Worldwide Skippa(ワーワイスキッパ):愛知県名古屋市出身のラッパー。2025年から怒涛のリリースラッシュで頭角を現し、Littyとも楽曲で共演するなど親交が深い。すきっ歯ではない。ラグビーのスキッパーが由来。シャトレーゼで働いていた。
- ANARCHY(アナーキーベイベー):日本語ラップシーンを代表する実力派ラッパーの一人で、「KING」とも称される存在。「Mooove Bitch」に客演として参加。
- Manaka(マナカ):大阪府出身、Little Glee Monsterでの活動を経てラッパー(?)に転身した異色の経歴を持つアーティスト。Littyとも交流が深い。スタイルがいい。
「Mooove B*tch (feat. ANARCHY)」は、2001年にリリースされたLudacrisの代表曲「Move B*tch」(ft. Mystikal, I-20)へのオマージュ的なコンセプトを持つ楽曲だ。プロデュースは3Li¥enの盟友であるFoux、MVは Awich や NENE の作品も手がける堀田英仁が監督を務め、ファッションブランド〈XLARGE〉が協力している。渋いオールドスクールのサンプリングセンスは、往年のUSヒップホップを聴いてきた層が思わずニヤリとするような選曲だ。
▲サンプリング元は、2001年のLudacris「Move B***h」(ft. Mystikal, I-20)。
楽曲のテーマは一貫して「フェイク批判」だ。リップシンクや作られたキャラクター、金の力でヒップホップカルチャーに入り込もうとする者たちへの苛立ちを、3Li¥enはストレートな言葉で綴っている。ANARCHYも自身のパートで、リアルじゃない没個性なラッパーたちへの批判を重ねている。
くすぶっていた確執
この「フェイク批判」路線は今回が初めてではない。3Li¥enは今年3月にリリースされたANARCHYのアルバム『Crest』収録曲「Doudemoii (feat. 3Li¥en)」でも、「アイツの顔とか外見とかマジどうでもいい」「画面の中だとマジ調子がいい 裏ならグチグチするのは簡単」といったリリックで、シーンの現状への怒りをすでに滲ませていた。
そもそも3Li¥enは以前から、Litty(と思われる存在)への不満をたびたび口にしていた。要約すると、「見た目の可愛さだけで、HIPHOPと呼べる中身が伴っていないのに、コネや金銭的な後ろ盾、その他の不適切な後押しでPOP YOURSのようなフェスに出演できるのは納得がいかない」「真面目に地道にやっているラッパーが大勢いる中で、Litty(場合によってはManakaも)だけがシーンで上がっていく状況が許せない」というものだ。
興味深いのは、この「Doudemoii」のあとにManakaが「Going (feat. Litty)」(2026年6月24日リリース)を出していることだ。時系列としては、Doudemoii(2026年3月)→ Going feat. Litty(6月24日)→ Mooove Bitch(7月13日)の順になる。一部では、このGoingが「Doudemoii」に対するさりげないアンサーだったのではないか、という見方もある。真偽は不明だが、もし本当だとしたら、本当は交戦的なキャラじゃなければ、正直「やめときゃいいのに」と思う。ラッパー達はめんどくさい人が多いので、誤解を招きかねない楽曲リリースがきっかけでビーフに発展した例はこれまでも少なくない。
さらに「Mooove Bitch」のリリース前日には、Instagramのストーリーで「hiphop舐めてるパチモンと同じ土俵にいるぐらいなら辞めてやるよ」という文言とともに、7月13日に何かが起こることを予告していた。こうした一連の流れを踏まえると、「Mooove Bitch」がLittyに向けたものであることは、もはや疑いようがない。
余談:Tokyo Galに似すぎじゃない?
これはLittyのディス疑惑とは全く別の話だが、X上で「MVの冒頭に出てくる女性、Tokyo Galに似ている」という意見を見かけた。確かに似てる。声がめっちゃ似てる。何なら顔より声と喋り方が似てる。そっくりだ。単に似ているというより、正直これはおそらく本人なのではないかと思っている。ただ、映像はリップシンクをしておらず、Tokyo Galの特徴である目の下と顎の横のほくろもこの映像では確認できない。
余談:3Li¥enの関西弁、正直どうなの
3Li¥enといえば「ハイエナジー」を合言葉に掲げる明るいキャラクターと、軽快な関西弁のトークで知られている。関西弁については、大阪で同棲していた彼氏の影響で使うようになった、と本人がインタビューで語っている。ただ、関西圏出身の筆者からすると、正直このイントネーションにはかなり違和感がある。何だかかなりむず痒い気持ちになる。エセ関西弁と言われても仕方がないレベルで、彼女の持ち味である平場のトークに素直に乗り切れない自分がいる。
映画やドラマで関西弁が下手な役者が関西人役を演じていると、それだけで内容に集中できなくなるくらい「エセ関西弁」に敏感なタチなのだが、最近の作品でいうと『国宝』の横浜流星の関西弁はなかなかにきつかった一方、『地面師たち』のピエール瀧の関西弁はそこまで気にならなかった。この辺りの感覚は人によるのだろうが、3Li¥enの関西弁もその「気になる側」に余裕で入ってしまう、というのが筆者の正直な感想だ。
「本物」はどちらか
今回の騒動が単なるゴシップで終わらないのは、これが日本語ラップシーンの「オーセンティシティ(本物らしさ)」を巡る根本的な論争と直結しているからだ。
LittyにHIPHOPを感じないというのは、筆者もそう思う。曲自体、あまり好きじゃない。代表曲「Pull Up」がなぜあそこまで人気になったのか、正直よく分からない。歳のせいだと思うことにしている。
MVに出てくる取り巻きも、たぶん友達を呼んできたんだと思うけど、その友達の立ち振る舞い、FLEX具合が素人っぽくて、育ちの良さが隠しきれてないというか、全然慣れてなさそうで、ぎこちないんだよなぁ(別にいいんですけどね)。
HIPHOPっぽい歌詞をたまに歌っているけど、それ本当か?と思うこともある。だってストリートの遊び方とか全然知らなそうだし、東京のアンダーグラウンドに正面から触れたことなさそうだ(偏見)。その辺りは3Li¥enの方がよっぽど理解してそうに見える。
もっとも、言うまでもないが、HIPHOPの本質はインテリジェンスやナレッジの部分も大きく、ナード系のラッパーだって超HIPHOPだ。ただ、Littyの場合は、別にナードでもないし、インテリなんだろうけど、何でかわからんけどHIPHOPを愛している感じが全然伝わってこないんだよなぁ。俺が知らないだけの可能性もめっちゃあるけど。あと、ライブも3Li¥enの方がうまそうだな。
だからといって今回のハイエナジーのやり方を全面的に支持できるかというと、そうでもない。KINGとも称される実力派・ANARCHYを味方につけた状態で一方的に批判を展開する構図は、優等生的な立場のラッパーを、年上の後ろ盾を得た側が叩きにいくような、弱い者いじめに見えなくもない。そもそも3Li¥en自身、「チーム友達」で一躍注目を集めた当初はラップを始めてからまだ日が浅かったと語っていたはずで、必ずしもキャリアが長いわけではない。それにもかかわらずアナーキーの威を借りて「シーンを背負う」立場から物申すスタンスを取ることには、正直首をかしげる部分もある。
Litty側についても、評価は割れている。ビジュアルと枕で人気を得たみたいな意見を見ると、確かに出る杭は打たれるの最たる例だな、と思う。妻子持ちとやると暴露されてるけど、その妻子持ちは誰かというと、Lion Meloという噂。Lion Meloってそんなに凄かったんか、前にMIKADOと7と鼎談していた動画は見たけど、ホムンクルスほどの名うてのプロデューサーではないとしてもLittyのフックアップには影響していたのかしらん。もっとも、Littyがベテラン勢であるNORIKIYOやC.O.S.A.と楽曲で客演を果たしている事実は、無視できない。正直、NORIKIYOとの曲が発表されたときは少しショックを受けた。EMPIREとの契約による資金力も一因としてあるだろうが、実力を認めない相手と安易に組むとは考えにくいベテラン勢からのフックアップは、Littyがキャラクター先行だけの存在ではないことを示す強い状況証拠にもなりうる。
Worldwide Skippaの裏アカウントとの応酬
騒動が本格化するきっかけとなったのが、名古屋を拠点とするラッパー・Worldwide Skippaを巡るやり取りだ。SkippaはLittyと過去に楽曲でも共演しており、公私ともに親交が深い人物として知られる。
Skippaの裏アカウントとされる「vvsonmydick」が、「Mooove Bitch」について、人脈重視でキャラクター先行のタレント売り、ラップスタア出演のブーストもありながら肝心のラップ自体は平凡で、数字が伸び悩んでいることへの焦りから、安易な世論に乗っかるようなディスを出したのではないか、という趣旨の投稿を行った。同アカウントは、ディス曲を聴いた感想として、3Li¥en本人のバースはLittyのコメント欄で語られていたような内容の焼き直しに過ぎず、印象に残ったのはANARCHYのパートだけだった、とも綴っている。

この投稿に対し、3Li¥en側とみられるアカウントから強い調子の反論が返された。裏アカウントで陰口を叩くくらいならフォローを外すはずだと挑発し、Skippa自身がラップスタアへの応募を重ねている点を引き合いに出しながら、「お前に言われる筋合いはない」という趣旨で切り返す内容だった。

このやり取りをキャプチャした投稿はX上で急速に拡散し、ある投稿は42万回以上、別の投稿でも11万回以上の表示を記録するなど、大きな話題を呼んだ。
「セクハラコメント」批判と「チン騎士」呼ばわり
反響が広がる過程で、議論の軸はもう一段階ずれていく。Worldwide Skippaは裏アカウントではなく本アカウントで、「ヒップホップを守りたい」と言いながら、タマ(睾丸)に関する下品な野次のようなセクハラ的コメントには乗っかる層こそ本来非難されるべきではないか、という趣旨の投稿を行い、ディス曲を囃し立てる一部の反応に苦言を呈した。裏アカの名前がvvsonmydickであるにもかかわらず・・・。

コメ欄が確かにキモいことはそうだし、それに乗っかってる3Li¥enには、少し不信感を覚えるし、このことに関しては反感を買うのは当然だ。その意味で、「タマに来る」とTokyo galに激似の人に言わせたことは悪手だろう。Littyは、主にYouTubeのコメ欄においてXでの本田望結みたいな消費のされ方をしていて、本田望結はそのことをどう思っているか知らないが、Littyに対するセクハラのコメントは、本人は本意ではないだろう。変態達の人気が欲しいからやっているわけではなさそうだし。
思えば、昔の「ニート東京」でも、女性アーティストが出た回では同じようなノリのコメントが並び、運営側が注意していたことがあった。Licaxxx(リカックス)の回なんかは、正直変態が行きすぎていて、大喜利を超えた一種の芸術性すら感じて少し笑ってしまったことがある。
こうした指摘に対しては賛否が分かれた。ある返信アカウントは、3Li¥en側の切り返しはセクハラコメントではなくラッパー同士の応酬に過ぎないとSkippaをたしなめつつ、「エリエンにはLittyを食ってほしい」という趣旨の発言をするなど、擁護と煽りが入り混じった反応を見せた。一方でSkippaは、友人であるLittyがディスの標的にされ、さらに自身も面識のない相手から一方的にフォローを外されたことに気づいたとして、「またチン騎士(=イタい男の意)と言われるだろうけど」と前置きしつつ困惑と落胆を綴っている。
リスナーからの反応は割れている
この一連の流れについて、他のリスナーやシーン関係者からもさまざまな声が上がった。
- すでに誹謗中傷を受け続けているラッパーを標的に選ぶこと自体が陰湿だとして、3Li¥enの姿勢を明確に批判する声
- Littyの楽曲自体は好きだが、それが「ヒップホップ」と呼べるかは微妙だとしつつ、女性蔑視的な発言は論外だとする中立的な意見
- Skippaの一連の行動(裏アカウント疑惑、お気持ち表明、フォロー外れ騒動など)を皮肉交じりに茶化す声
- 子持ちの男の方に批判が向かない構造そのものに疑問を投げかける声

こうした反応からもわかる通り、今回の騒動は単純な「ディスの是非」にとどまらず、匿名アカウントでの発言の是非、ジェンダーやセクハラ表現を巡る感覚の違い、そして「何がヒップホップ的な批評でどこからが誹謗中傷か」という、シーン全体が抱える論点をあぶり出す形になっている。
Manakaについて
個人的にはLittyよりもManakaの方が圧倒的に好きだ。ピーナッツくんも言ってた通り実力派って感じのディーバ。
そんなManakaから、2026年一番と言っていいサマーチューン「Summer Time (feat. DADA)」が公開された。今年これを超えるサマーチューン出ないんじゃないの?正直、DADAの客演は最初「いらなくない?」と思っていたのだが、聴いてみるとこれが良い。ビートとManakaの歌声が最初は噛み合っていないようにも感じたが、聴けば聴くほどクセになる仕上がりだ。ネット上で見かけた「エロいと思って観るには歌が良すぎるし、歌が良いなと思って観るにはエロすぎる」というコメントには思わず笑ってしまったが、言い得て妙だと思う。
ABEMAのHIPHOP総合情報番組「HIPHOP MAGAZINE -THE HOPE-」(通称ヒプマガ)にReichiが出演した際、バストサイズについて「羨ましい」という趣旨の発言をしていたことがあり、その回には3Li¥enも同席していたことを思い出した。今回のMVが、変な形で3Li¥enの逆鱗に触れて話をさらにややこしくしないことを願うばかり。



